ごめんね

――次の「ごめんね」も最高にスウィートな曲で、大好き。

カネコ 嬉しいです。そう、これも裏声と地声の話でいうと、全然うまく歌えなくて、アルバムに入れるかどうかも悩んでて。「もうやめようかな」って思ってたんですけど、でも入れました。

――そうだったんだ。すごくうまくいってると思うけど。

カネコ よかったー。結局、これは裏声にしようと思ってたところを地声でいっちゃったんですけど。〈ほんとうごめんね〉の「ごめんね」がめっちゃ高くて、でも裏声にすると中途半端で出ない。真ん中の音域なんですよね。だからもう無理矢理に地声でいけば出るわと思って、出した。でも〈電球に透けてる君が~〉とかその辺も行ったり来たりするから、もう難しくて。

――〈電球〉の「球」が裏声になったり、〈君がきれいだよ〉の「君」が裏声になったりね。これも本当にすごい。ラスト・ヴァースのいちばん最後の〈ごめんね ごめんね〉のところは、2回目の〈ごめんね〉だけ裏声になるんだよね。

カネコ そう、そこは考えてそうした気がする。そこだけ裏声にすれば最後に〈あーあーあーあー〉って入るから、そこで上げちゃえばいいやと思って、ここだけは裏声にしましたね。

――そこで裏声にしたことによって、ラヴ度が高まるというか。

カネコ マジっスか!? 高まった?

――うん、高まった。

カネコ やったあ!

――(笑)それで最後に〈あーあーあーあー〉って地声と裏声が交互に入れ替わりながら感情がピークに達する。この流れが絶妙。

カネコ これもね、楽器が素敵ですよね。

――〈外は雨降り〉って言ったら、雨降りっぽいギターの音が返って来るし、〈街の日差しの中〉って言ったら、日差しっぽいギターが来る。同じような音なのに違って聞こえる。そういうのが面白いなぁ。

カネコ そうそうそう。素敵なアレンジだなと思います。これは最初は全然違うギターのフレーズを付けてたんですけど、林くんがそれを全然気に入らなくて、考え直して来て、あれになった。みんな家でいっぱい考えて来てくれて、すごく嬉しかったですよ。

――この曲でまた夜が訪れる。1番では〈あしたがあるからがまんした/シングルベッドの中で夜が明ける〉、2番では〈あしたがあるからがまんした/解けた靴紐 今は泣くのをこらえる〉と言ってて、なんか切ない。でも〈ごめんね ごめんね〉っていう言うところは、とっても愛おしい。

カネコ ほんとですか?(笑) これはね、謝りたいですよね。謝ってばっかり。

――〈単純な気持ちで傷つけたね〉。恋人にも友達にも、そういうことばかりやってしまいますよね。でも、本当に素直な気持ちになったときじゃないと、なかなか謝れないでしょう。

カネコ そうですねえ。「本当にすまん」と思ってるときとか、本当に悪いことをしたときしか謝れないですね。

――でも、傷つけたときも、傷つけられたときも、口先だけで謝るんじゃなくて、本当に心の底から謝ったり、謝られたら、胸を打たれる。そういうときの記憶が甦るから、この曲はグッとくるのかなと。

カネコ たしかにね。これもわりと新しい曲ですね。

――「明け方」「りぼんのてほどき」「ごめんね」というこの3曲とも、胸がキュンとする感じですね。

カネコ たしかに。ちょっと切ない系ですかね。

――ひたむきなラヴソングが続いて、前半の山場の3曲という感じがします。

カネコ グッと中に入り込んでいくような感じ。

――その前の初めの3曲が導入部というか、スッとさりげなくアルバムの世界に導いてくれる。

カネコ やっぱり今の私が好きなのは、最初は誰でも来れるような状態にして、そこからズブズブ行って、ハマっていく感じ。本当に深海に入っていくような感じにしたいな、というのは、すごくあったから。

――いや、もうまさにそうなってる。

カネコ しかも、これでLPの前半が終わって、引っくり返すのは素敵だな、って思う。

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