――「アーケード」はライブ映えするキャッチーな曲で、好きな人も多いんじゃないかと。
カネコ 「アーケード」は、行きつけの喫茶店がアーケードの中にあって、その喫茶店の曲を作るか、と思って書いた曲です。いつもなら構成をそんなに考えなくてもスッと曲ができるんだけど、これはすごく難産だった。Aメロ、Bメロ、サビって、メロディやコードをめっちゃ考えて作ったから、できたときにすごく嬉しかったことを覚えています。〈喫茶店はアーケード内〉というAメロが先にあって、これをどうしても使いたい。でも、その後がどうしても出てこない。どうしたもんかなと思って、「ゆくえ」みたいな感じで、箇条書きのように歌詞を組み立てて作った。
――曲ができてすぐにライブで披露しましたか? それともしばらく寝かしていた?
カネコ ずっと寝かしてましたね。最初にライブでやったときはマジで下手くそで、バンドで合わせてやっとかたちになった感じ。最初はコードを付けて歌っていてもキーが分からなかったけど、アレンジはスッとできたから、なんとかバンドの勢いに背中を押されて歌えるようになった。最初は裏声も全然使えなかったし。
――カネコさんは、地声から裏声に変わる瞬間が最高に切なくてグッときます。
カネコ ほんとですか。最近やっと裏声が出せるようになって。それまでは「裏声」という概念が自分の中に存在しなかった。「さよーならあなた」と「アーケード」で、本当にようやくできるようになった感じです。
――課題を一個一個クリアしていった。
カネコ うん、クリアしていく感覚がある。やっと以前より高い(音域の)曲作れるようになったから嬉しい!
――裏声が出せると、曲作りの幅が広がるでしょう?
カネコ 広がりますね。曲調に変化がつけられる。
――〈仕事もまじめに行かないし 誰かの言うことききたくない すべてことに理由がほしい〉というサビのフレーズは本当に箇条書きですね(笑)。
カネコ 〈仕事も真面目に行かないし〉って、自分で書いていて誰のこと言っているのか全然分からなくて。〈誰かの言うことききたくない〉は、本当に聞きたくないから。
マネージャー 「ここがいい」って言うお客さん、多いよね。どこかでモヤっと思っていることを歌にしてくれた、という感じ。
カネコ ああ、なるほどね。この曲はライブでの爽快感が半端ないですね。でっかい声で歌うと気持ちいいったらない。
――「ごあいさつ」の〈今となりの君のまつげがおちるのを 見逃さなかったよ〉というラインと、「アーケード」の〈君って歯並び悪いね 今気づいたよ〉というラインが近いといえば近いけど、ここはもしかすると盛り上がるところではないのかな。好きな相手の歯並びが悪いのを見つけたときは、上がるというより下がるんじゃない?
カネコ えー、歯並びが悪いって、ちょっとチャームじゃないですか? 私、歯並びがすごく良いんですよ。だから、歯並びが少し悪かったり、八重歯だったりする人に対しての憧れが微妙にあるんですよね。
――あ、逆なんだ。そういうところを発見すると上がるんだ。
カネコ ちょっと上がる。「おっ!」って思う。私は身長も体重も平均的なんで、普通より痩せている人とか、逆に大きい人に対する憧れがあって。だから、人よりちょっとまつげが長い、みたいなところに目がいく癖はあるかも。自分が普通過ぎることが少しコンプレックスかもしれない。