――そして次に「ジェットコースター」が来る。
カネコ 「ジェットコースター」はもともと購入者特典用に作った曲なんです。いざ録って聴いたら、他の曲に比べて異様に肩の力が抜けた曲になって。他の曲は全部力を入れて録ったものばかりだったから、肩の力が抜けているものが入っている方がバランスが取れるんじゃないかな、って。
――確かにここで一服みたいな気分になるから、すごくいいと思います。
カネコ これはとしまえんに行ったとき楽しかったから、曲作ろうっていう感じ。ジェットコースターに乗ったら本当に逆さまになって怖かったのは実話です(笑)。空中ブランコも西陽が差しているときに乗って、めっちゃ綺麗だった。としまえんは結構好きで、冬にも行ってスケートしました。
――〈どうにか生きてる 暑い夏は汗とまらない〉という一節があるから、この曲の季節は夏ですよね。
カネコ 夏ですね。半袖着てた。
――夏の1日がここに記録されているんですね。後半の〈触れたい 触れたいな しりたいと思うのは 可笑しなことじゃないでしょう〉というラインも大好き。キュンとくる。
カネコ 確かに胸キュンですね。今回の曲は、自己正当化がやっぱり多いですね~。大丈夫、大丈夫って自分に言い聞かせている。
――〈この街も悪くはないね〉というフレーズがあるということは、そんなに全部が気に入っているわけではない?
カネコ そうですね。将来、東京にずっと住むことはできないなと思っていて。ちょっとスピードが速すぎる。私は周りをキョロキョロ見て歩いてしまうんですけど、人の肩に当たってしまったりして。それが最近疑問で仕方がないっていうか、私は無理だなって。
――東京は、どこもかしこも渋谷のスクランブル交差点みたいにせわしなくなりがちですからね。
カネコ そう。それこそ私が小さい頃に見ていた忘れたくないことを、忘れないように意識していても忘れていってしまいそうで、東京に居るとたまに怖くなる。みんな、ちょっと速すぎない? そんなに急いで何に向かっていっているの、って思う。今は友達もいっぱいいるし、会いたい人もいっぱいるから、そう思うと東京に居る価値はある。今、東京を離れたらみんなに会えなくなっちゃうから、すぐに移住しようとはまったく思ってないけど、例えば結婚して、子供ができたときには、東京には居たくないです。
――カネコさんの生まれ育った横浜でも東京と違う?
カネコ 横浜といっても、私が住んでいた郊外は最寄り駅まで歩いて25分くらいあって、野菜の無人販売所がポツンとあって、道路沿いにファミレスか牛丼屋しかないような町だったから。
――カネコさんは東京で戦っているんですね。
カネコ 自分の大切な何かを失くさないようにしているんだと思う。
――それがロックをやっている意味でもある?
カネコ 嫌なことや生きづらさには負けたくないですね。楽しいことを見つけて生きていく気でいるけど、負けたくはないです。
北沢 だからこそ、いろんな曲の中で自分に「大丈夫」と言い聞かせている。
カネコ 今は本当に「大丈夫」って言いたい。